はじめに

計測技術を半導体製造装置に展開し、世界No. 1のモノづくりに貢献


  東京精密グループは、業界で唯一「計測技術」を持つ半導体製造装置メーカです。これまでは異なる事業領域を有することによる収益安定性を重要視していましたが、半導体デバイスの技術進化が限界を迎えつつある中、計測の技術を半導体製造装置に展開することで、より高精度の検査や加工が可能になり、世界No. 1のモノづくりに貢献できると考えています。

 

  2022-2024年度中期経営計画において、定量目標の達成のみならず、半導体製造装置事業と精密測定機器事業の技術シナジーをさらに高めていきます。

 

半導体製造装置を取り巻く環境

激化する市場環境下で技術的な優位性を維持

 

  半導体市場は急速な高性能化と個数成長が続いており、これまでは前工程技術の進歩による微細化やウェーハの大口径化によりニーズに応えてきました。現在は技術的な限界に近づいており、後工程技術で実現可能な3次元パッケージなどの新たなソリューションが模索されています。東京精密グループが提供する製品群は後工程向けが多く、こうした技術革新に大いに貢献できると思います。


  また、現在は国策として半導体生産強化に取り組む国が増えています。この動きは、東京精密グループにとって市場拡大機会になる一方で、新たな競争を生むリスクを伴います。東京精密グループは研究開発費を投じて技術的な優位性を維持するとともに、サービス体制を整備することで競争の優位性を維持したいと考えています。

精密測定機器を取り巻く環境

ソリューションの拡大と海外販売を強化

 

  高品質なモノづくりに必要不可欠な精密測定機器において、東京精密グループは高精度部品の寸法や形状の測定需要、特にICE(内燃機関)自動車のエンジンなどの需要を獲得し、安定成長を維持してきました。また省エネ、燃費の効率化、自動車プラットフォームの統一化などにより、新たな需要を創出してきました。


  新型コロナウイルス感染症拡大による世界的なモノづくり需要の停滞は、当社の実績にもネガティブな影響を与えました。さらにカーボンニュートラルや自動化の流れは精密測定機器需要そのものに変化を与えています。また精密測定機器は海外需要も多いものの、海外売上高比率は半導体製造装置ほど高くはないことから、ソリューションの拡大を図るとともに、海外販売を強化していきたいと考えています。

2018-2021年度 中期目標 総括

課題残すも定量目標を達成

 

  東京精密グループは、2018年5月に中期目標 (ROE10%以上の維持、連結営業利益 220億円) を開示し、さまざまな戦略を実行しました。

 

  半導体製造装置事業では、5G(第5世代移動通信システム)の普及、車載半導体・中国需要の増加による成長を想定し、製品ラインナップの拡充、アプリケーションセンタの新設、消耗品売上の拡大、キャパシティ拡張などに取り組みました。

 

  精密測定機器事業では、自動車のプラットフォーム革新や工作機械、航空機関連需要の増加を想定し、充放電試験システム事業への進出、自動化・省力化に関係したサービスビジネス強化、基幹部品内製化などに取り組みました。

 

  2021年度の実績は ROE17.4%、 連結営業利益 283億円となり、定量目標を達成しましたが、生産キャパシティの限界やNEV(新エネルギー車)への移行が想定以上に加速したことを踏まえ、次の中期経営計画に反映しました。

 

2022-2024年度 中期経営計画 概要

事業機会を取り込み、成長業界への取り組みを強化

 

  東京精密グループは、2022年5月に新たな中期経営計画を開示しました。

 

  当社グループは5Gによる通信技術の進歩に伴い、バーチャルとリアルの融合を意味する「Society 5.0」 の世界がさらに広がると考えており、半導体市場は金額・数量の両面で爆発的に成長すると想定しています。また精密測定機器関連市場は、ICE(内燃機関)自動車市場が減少に転じる一方で、NEVや航空機など新たな測定ニーズが拡大すると想定しています。

 こうしたなか、半導体製造装置では半導体デバイスや電子部品の高機能・複雑化に伴う検査装置(プロービングマシン)や、デバイスの個数成長に伴う加工装置(ダイシングマシン、ポリッシュ・グラインダ)の需要拡大、さらにカーボンニュートラルに向けたSiC(炭化ケイ素)、GaN(窒化ガリウム)などの新たな化合物半導体に関係した加工プロセスの拡大が事業機会になると考えています。そのため、お客さまのニーズにマッチした開発を進めるほか、加工装置で新製品を展開し、業容拡大を図ります。

 

  精密測定機器では、カーボンニュートラルが急速に進み、NEV、再生エネルギー市場が拡大することで、新たな測定需要が喚起されるほか、労働人口の減少に対応したモノづくりの自動化需要、さらに半導体に関連した市場が事業機会になると考えています。そのため、成長業界への取り組みを強化するほか、充放電試験ビジネス、自動化ソリューションへの取り組みを進めます。

 

  また、2030年のCO₂排出量を2018年度比50%削減など持続可能な社会を実現する会社になるための取り組みを強化します。

 

  以上を踏まえ、東京精密グループの2024年度の定量目標をROE15%以上、連結売上高 1,700億円、連結営業利益375億円と設定しました。各事業別に戦略を進めていくほか、埼玉県飯能市に建設中の新工場による生産キャパシティの拡張、アプリケーション力の強化などにも取り組みます。

おわりに

世界No. 1のモノづくりへ。エンジニアの思いを形に

 

  東京精密グループには、経験豊富なエンジニアがお客さまの悩みに正面から対峙し、知恵と経験に基づき、追究することで技術革新を成し遂げるという企業文化があります。

 

  これは非常に大事な視点であるため、私はエンジニアに対して「自分なりの考えを製品開発に反映してほしい」と常に伝えていますし、会社としてアイデアを具体化するための開発予算執行の仕組みも構築しています。これからも「お客さまと共に世界No. 1のモノづくりを実現する」という思いを大事にしていきます。