
投資と還元の好バランスを図る
半導体製造装置事業と精密測定機器事業をグローバルに展開する東京精密グループは、需要変動、マクロ経済や地政学リスクなどにさらされながらも、お客さまの先進ニーズを先取りした最先端の製品開発、要素技術開発にまい進しています。
こうしたなか、CFOとしては財務基盤の安定性維持を図りつつ、今後の成長や企業価値向上に必要な投資に関する判断と成長を後押ししていただいている株主ならびに当社の事業を支えている従業員、サプライヤの皆さまへの還元などのバランスを取っていくことが重要だと考えています。
先進的なニーズを捉えて戦略的に判断
東京精密グループが属する業界は研究開発を通じて常に技術的優位性を維持し、先進的なお客さまのニーズを先取りしていくことが求められます。そのため東京精密グループでは、将来の需要予測やお客さまの動向などを踏まえつつ、研究開発費用と各製品事業の損益を定期的にレビューし、開発継続の可否を判断しています。研究開発に関する指標としては売上高研究開発費比率10%以内を目安としています。
設備投資につきましては、その水準をEBITDA(償却前営業利益)見込の25%以内を通常水準、50%を最大水準に設定し、コントロールの目途としています。特に長期的な市場拡大が予想される半導体製造装置事業では、生産キャパシティの拡充を喫緊の課題と設定しており、2022-2024年度中期経営計画において飯能工場(埼玉県飯能市)を竣工させる予定です。市場拡大が継続する場合はさらなる生産キャパシティの拡充策も検討課題となる可能性がありますので、市場動向を見極めながら判断していきたいと考えています。
また東京精密グループの企業理念である「世界中の優れた技術・知恵・情報を融合して世界No. 1の商品を創りだし、皆さまと共に大きく成長していく」の達成において、内部留保資金を活用するM&Aも有効な手段の一つと考えています。その実行にあたってはフリーキャッシュフローがマイナスにならない範囲を検討の目途としています。
なお、各事業部門の成長のために投下した資本に見合ったリターンが出ているかを把握し、投資判断など経営に活かす観点から、2022-2024年度中期経営計画より社内評価基準としてROIC (投下資本利益率)を導入することとしました。2022年度はこの算出・管理に必要な仕組みづくりから進めます。
株主還元と自己資本水準への考え方
東京精密グループは、株主の皆さまへの継続的な利益還元も経営の重要課題の一つと考えています。この観点から、配当については業績連動の利益配分を基本に、連結配当性向40%を目安として実施していきます。なお、自己株式の取得については、キャッシュ・フローや内部留保の状況等を総合的に勘案しつつ、剰余金の配当を補完する機動的な利益還元策と位置づけています。
また東京精密グループが属する業界は市場変動が大きいため、変動インパクトを吸収できる一定水準の現預金ならびに自己資本を維持することが重要と考えています。現預金水準については投資案件なども含めて固定費、運転資金水準をベースに、自己資本の水準に関しては利益動向や還元のバランスなどを踏まえて総合的に勘案して管理しています。
企業価値向上に向けたCFOの使命
2008年の世界的金融危機は当社の経営にも大きな影響を及ぼし、不採算事業からの撤退などの痛みを伴う構造改革を余儀なくされましたが、この構造改革が第二の創業としての出発点となったことを実感しました。
現在も先行き不透明な事業環境下にありますが、最先端技術を駆使した世界No. 1 商品を提供することにより企業価値を向上し続けられるように、CFOとして世界的な経済不安の状況においても企業を存続させること、そして成長に資する投資がスムーズに行えるような財務状況の維持を使命として、責務を全うしていきたいと考えています。